インフルエンザのウイルスのタイプを最短10分で見極められる診断キットを、国立感染症研究所などが開発した。
現在は専門機関で2時間半以上かけて行われる精密診断に比べ、大幅な時間短縮が見込める。取り扱いも簡易なため、一般の病院でも利用できる。新型インフルエンザの発生時の素早い初動対応やウイルスタイプに合わせた治療に役立つと期待され、数年以内の実用化を目指している。
同研究所の影山努室長らは、ウイルスの遺伝子を酵素などに混ぜて一定の温度下に置くと、短時間で大量に増やせる技術を活用。ウイルスタイプの診断機能を持つ数センチ四方のチップに酵素を封入し、このチップを置ける保温装置を作った。患者の鼻の粘液を溶かしてチップに注ぎ、保温装置に置くと、遺伝子の大量増幅により、ウイルスのタイプを素早く検出できる。
季節性のA香港型(H3N2)や、2009年に大流行したH1N1型などの最大25種類のタイプのどれかを一度に調べられる。どれかに該当すれば10分、どれにも該当しない場合も40分で分かる。現行の精密診断でA香港型だった30人に新キットを使いウイルスのタイプを調べたところ、29人で結果が一致した。
現行の精密診断は作業が煩雑で、結果の判明に時間がかかり、一般の病院では使いにくい。一方、病院で行える簡易診断ではどのタイプかは分からない。